無溶媒選択的水素化反応のための金属含有イオン液体をベースとした不均一系触媒の開発

掲載日2024.09.09
最新研究

理工学部 化学生命理工学科
助教 Etty Nurlia Kusumawati
触媒化学、ナノ材料化学、表面化学、グリーンケミストリー

概要

岩手大学理工学部エッティ助教らの研究グループは、シンナムアルデヒド(CAL)からシンナミルアルコール(医薬中間体、化学薬品、香水、フレグランスの製造に使用)への無溶媒選択的水素化反応のために、イオン液体(IL)官能基化SBA-15上に高活性小型白金-コバルトバイメタリックナノ粒子を開発することに成功しました。本研究は、溶媒の助けを借りずにCALを選択的に水素化することに焦点を絞った研究として初めて報告されました。この成果は、化学工業活動に起因する環境問題の解決を目指したグリーンケミカルプロセス用不均一系触媒の開発に大きく貢献するものと期待されます。

背景

CAL水素化は、2つの競合的水素化部位(C=CとC=O)があるため、魅力的なタイプの反応です。C=Cを経由するヒドロシンナムアルデヒド(HCAL)の方が形成しやすいため、C=Oを経由するシンナミルアルコール(COL)へのCAL水素化は極めて困難です。私たちの環境と社会のために、グリーンケミカルプロセス、特に無溶媒反応システムを開発し、Eファクター(廃棄物と生成物の重量比)を大幅に削減し、コスト削減、エネルギー消費の削減、不要な産業廃棄物の削減につなげなければなりません。

研究内容と成果

本研究では、イオン液体で官能基化したメソポーラスシリカSBA-15(Pt-Co/IL-SBA-15)上の小さな白金-Coナノ粒子により、無溶媒反応条件下でCALをCOLに選択的に水素化しました。イミダゾリウムILの特性を利用して、溶媒の助けを借りずに担持Pt-Co触媒上でCALの選択的水素化反応に焦点を当てた研究を初めて報告しました。一般に固体触媒は非常に低い活性を示し、溶媒がない場合には容易に失活します。しかし、Pt-Co/IL-SBA-15は、無溶媒でもCOL生成に対して顕著な活性と選択性を示しました。この研究により、小さなバイメタル?ナノ粒子を形成するILの本質的な役割と、反応における固定化溶媒としての役割が実証され、溶媒を加えることなく反応を進行させることができました。高い選択性は、Ptδ?とCoδ?を有する小さなPt-Coバイメタルナノ粒子が形成されたためであり、このバイメタルナノ粒子は、モノメタルナノ粒子とは電荷密度が異なります。バイメタルナノ粒子中のPtδ?とCoδ?の存在が、C=Oを介した水素解離とCAL吸着を促進します。バイメタル触媒の活性とCOL選択性は、Pt/Co比が3:1から1:3に減少するにつれて徐々に向上しました。PtCo?/IL-SBA-15(Pt/Co=1:3)では、COL選択率98.2%で最高の性能を達成しました。

今後の展開

開発された固定化IL触媒は、様々な有機変換において有望な用途を示しました。特にCO?分子を吸着する能力を有しています。したがって、このタイプの触媒は、温和でグリーンな反応条件下でCO?を価値ある化学物質に変換するCO?固定化反応に使用されます。

掲載論文

  1. 題目:Highly Active Pt–Co Bimetallic Nanoparticles on Ionic Liquid-Modified SBA-15 for Solvent-Free Selective Hydrogenation of Cinnamaldehyde
    著者:Etty N. Kusumawati, Takehiko Sasaki, Masayuki Shirai
    誌名:ACS Applied Nano Materials (Impact Factor 5.3)
    公表日:2023.9.23
    DOI: https://doi.org/10.1021/acsanm.3c03212
  2. 題目:Effect of Pt/Co Ratio of Pt–Co Nanoparticles on Ionic Liquid-Modified SBA-15 for Selective Hydrogenation of Cinnamaldehyde
    著者:Etty N. Kusumawati, Takehiko Sasaki, Masayuki Shirai
    誌名:ACS Applied Nano Materials (Impact Factor 5.3)
    公表日:2024.8.6
    DOI: https://doi.org/10.1021/acsanm.4c03125
本件に関する問い合わせ先

理工学部 化学生命理工学科
助教 Etty Nurlia Kusumawati 
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